「君がこれから何をされるか、聞いているかい?」 「は……い……」 椅子の中で霧は縮み込みました。 霧の父は貴族院の議員でしたが、権力争いに敗れて失脚し、反逆に荷担したと疑いをかけられ今は囚われの身です。 この館に出入りする中には司法に関わる者も多くいて、霧の身を差し出せば父の罪を減じてくれると、そう聞いたのでした。泣く母親を見かねて、霧はここに来たのです。 「……わたしが……どなたか知らない人ところにお嫁に行けば、お父さまを助けていただけると……」 「はははっ!」 対面にいる男、「御館様」と呼ばれていた人物は、小馬鹿にしたように笑いました。 「君はそんなふうに聞かされたのかい? どこかの狒狒爺に囲われれば助かると。まさか、そんな生やさしいものじゃないんだよ。もっとひどい」 男の声に霧はすくみ上がります。 「ここはね、社会の指導的立場にある人々が心身を寛がせるために設けられた治外法権の場所だ。そのためには君のような、世俗の垢に汚されていない乙女に手伝って貰う必要がある。つまり君は、これからね――」 霧の顔を寄せ、「御館様」は囁きました。 「毎日、何人もの男に体中の穴を犯されるんだ。その小さなおっぱいやおまんこを開発されて、チンポをくわえこまなきゃ気が狂っちゃう体にされちゃうんだ。気の毒だね」 「ひっ――」 その時の霧には男の言っている意味がわかりませんでした。でも恐ろしいことをされるのは理解できます。霧がもっと幼い、まだ幸せだった頃、信心深い祖母に聞かされた地獄の話が脳裏をよぎりました。悪い事をした人間は鬼に責め苛まれるのです。 ――わたしは、なにか悪いことをしたの? 顔から血の気が引き、体は震え始めました。うつむいて、なんとか小さい声を絞り出します。 「……わわ、わたし、その……考えさせて……」 「駄目だよ。もう帰れない。君の母上が認めたことだし、君は望んでここに来たんだ。今更約束を破ろうなんて、悪い子だね」 ちがう、ちがうの、と心の中で必死に否定しても、目の前の男の顔を消すことはできません。 「さあ行こうか」 男たちが入ってきて霧の両腕を掴み、長い廊下を引きずっていったのは、そのすぐ後のことでした。 |
それから霧は、無口な中年女たちの手で風呂に入れられました。 泣き疲れて、体中を洗われるままにされる彼女は、赤子に返ってしまったかのようでした。 お披露目と呼ばれる会が行われたのは、それからすぐのことです。 館の大広間、洋風に装飾されたホールに引き出され、霧はたくさんの人の視線を浴びました。 来ている客は地位の高い人々ばかりで、中には顔見知りまでいて、そんな人々が少女に好色な目を向けているのです。 霧の方は、黒いドレスを着せられて、人形のように椅子に座っていました。縄で縛り付けられ、手で体を守ることも、足を閉じることもできなくされています。 「さて皆様。この哀れな少女の初夜権を手に入れたいと思う方はいらっしゃいませんか?」 「御館様」がそう言うと、客たちの間にささやきが広がります。 「今日の娘は、先日捕らえられた二条卿の娘御だそうですよ」 「それは珍しい。希少ですな」 「だが、まず体を見せてもらわんとな」 「本当に初物かどうかも知れたものじゃない。当世風の若い娘はすぐ男に股を開くからのう」 「可愛い顔はしてるが、とんだ淫乱かもしれん。なにしろ悪事をたくらむ輩の娘ですからな、がはは」 声の中には、かつては霧の家にご機嫌伺いに来ていた者の言葉も混じっています。 霧は侮蔑の言葉に耐えて、ぎゅっと目をつむりました。 「失礼しました。では、この少女の体を自由にご検分ください」 「御館様」の言葉を待ちかねたかのように、男たちが椅子から立ち上がり、霧のもとに押し寄せてきました。 ――つづく |